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走れば間に合うはずなのに

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坂道を駆け上がる足がいつもより重い。かつての私はこの道を軽々と走り抜け、いつだってバスに間に合っていた。「走れば間に合うはずなのに…」声にならない言葉が唇からこぼれる。やがてバスの背中が遠ざかっていくのをただ見送るしかなかった。 バス停の前で立ち止まり、ふとショーウィンドウに映る自分を見た。頬は丸みを帯び、腹回りに余分な肉がついている。私は変わってしまった。この道を軽やかに走り抜けていたはずの自分が今ではどうだ。息は乱れ、体は重く、そしてバスには間に合わなかった。 入職したての私は自信に満ち溢れていた。生徒たちは「先生モデルさんみたいだね」と囁き、同僚からも憧れの眼差しを向けられた。引き締まった体、きらりと輝く瞳、自分でも誇らしく思える存在だった。けれどそれはもう過去の話だ。 少し走っただけで息が上がり、胸のあたりにじんわりと汗がにじむ。スカートはいつの間にか窮屈になり、シャツのボタンが心なしか張っている。それが今の私。 ストレスの多い仕事だ。教師同士の飲み会や終わりの見えない業務。気づけば夜遅くにスナック菓子に手を伸ばしてしまうのももう習慣になってしまった。それらが知らず知らずのうちに私を変えていったのだろう。少しずつ、だが確実に体重は増え、気づかぬふりをしながら私はその変化を見過ごしていた。「いつか痩せられるだろう」と心の中で何度も繰り返しながら。 学校では今もなお「できる教師」を演じている。生徒たちの前では笑顔を浮かべ、同僚の前ではいつもの明るい自分を取り繕う。だが、心の奥では焦りと自己嫌悪が渦巻いているのを私は知っていた。そうして限界は今日、バスに乗り遅れたこの瞬間に訪れたのだ。 そう、今日逃したのはバスではなくかつての私自身だったのだ。 もう、頑張るのはやめよう バスを逃したその瞬間、何かが私の中でぷつんと音を立てて切れた。もう、無理をするのはやめよう。生徒たちや同僚にどう思われても構わない。私は私でいいんじゃないか、そう思えたのだ。 それ以来、私は自分を取り繕うのをやめた。体はさらにふっくらとし、変化が確実に進んでいく。でも、なぜか心は以前よりも軽かった。生徒たちは私の変化に軽蔑するかもしれないが、それもいいだろう。誰にどう見られようと私の人生は私のものだ。この肥えた身体も今の私そのものだと。そう受け入れた。 #肥満化 #ぽっちゃり

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