私は今、一人の"娘"に別れを告げる。
生きて戻ってくることは無いだろう使命を背負い、私は彼女を抱きしめた。
エルフにとって短い時間ではあったが、共に過ごした彼女との時間はとても充実したものだった。
森で拾った彼女を、まるで本当の娘の様に接し育ててきた。
私は愛や結婚などというものとは、酷く無縁の人生を過ごしてきた。
そんな彼女の存在は、私の人生を大きく変えてくれた。
血の繋がらない私を、本当の父親のように慕ってくれたのだ。
唯一の心残りは、彼女の嫁ぐ姿を見れないことだ。
母親譲りの美しい金髪と藍色の瞳の娘は、きっと誰よりも美しい花嫁になったことだろう。
その姿を、私は見届けることはできない。
私はもう、君の元へ帰ることは無いだろう。
だからこそ…
ああ、だからこそ…
「お前の生涯が、どうか健やかなものであれ」