豊かな実り

村は黄金色に染まり、収穫を祝うハロウィンの夜が訪れていた。澄んだ風が田畑を渡り、村の広場には収穫された作物を誇るようにたくさんのカボチャが積み上げられている。その中で一人の少女が大きなカボチャを胸に抱え、満面の笑みを浮かべていた。魔女の仮装をまとった彼女は村人たちに祝福され、広場の中心で踊りながらカボチャを掲げていたのだった。 村人たちの声があちこちから響き、少女も笑顔で応えた。村人たちにとってこの祭りは何よりの楽しみであり、村全体が喜びに包まれる瞬間を共有する場でもあった。カボチャの重みを感じながら、少女は心の中で小さな祈りを捧げた——この豊作が、いつまでも続きますように、と。 その祈りが通じたのだろうか。それから村は驚くほどの大豊作に恵まれ続けた。日々の食卓は豪勢な料理であふれ、村人たちは皆その豊かな食事に舌鼓を打った。少女もまた日々の生活に幸せを感じながら、家族と共に喜びを共有しあった。 そして数年後のハロウィンの夜。広場の片隅で少女はふと自分の姿を見下ろした。手元に抱えるのはカボチャではなく、自らの腹に実ったもの——ふっくらと膨れ上がった贅肉だった。彼女はお腹をブニっとつかみ、ため息をつく。 「さすがに食べすぎたかも……」 そう呟き焦るように周りを見渡したが、表情は次第に笑顔へと変わる。 広場を見渡せば他の村人たちも同じようにふくよかな体型になっている。そう、彼女だけではなかったのだ。皆、豊作の恩恵を存分に受け取り、贅沢な食事を日々楽しんでいた結果、その実りを感じさせる体となっていった。彼女はひそかに安堵した。これなら自分だけが目立つこともないと。 彼女は肩をすくめ軽やかに笑った。 「祭りなんだから、楽しめばいいよね！」 その言葉通り彼女は再び祭りの喧騒の中へと飛び込んだ。広場にはカボチャランタンの明かりが揺れ、音楽と笑い声が溢れていた。彼女は踊り、歌い、友とともに楽しさに身を任せた。太ってしまったことなんて気にする暇もない。村全体が笑顔で溢れ祭りの熱気に包まれていたのだから。 夜空に輝く月が見守る中村人たちは手に手を取り合い、次の豊作を願う。豊かさとともに生きる彼らの喜びは、やがて少女の足取りをも軽くし、日々に感謝をしながら村の一員としてその瞬間を噛みしめた。