海に行きたいというルティマの意見から海水浴にやってきた煉太郎一行。
ルティマ「ひゃっほーい♪ 海だー!」
ネリネ「はしゃぎ過ぎよ、待ちなさい」
ネリネの制止を無視して海に飛び込むルティマ。
ルティマ「わっ、すごくしょっぱい! ペッペッ!」
ネリネ「準備運動も無しに飛び込んで足つっても知らないわよ」
そんな人外二人を余所に、浜辺でテントを張ってBBQの準備を整えていく煉太郎と玲児。
煉太郎「火の準備もよし。早速焼いていくか」
玲児「煉太郎、お前昔からこういうの手際いいよな」
煉太郎「慣れてるからな」
次々と網に野菜をのせて焼き始めながら、火の調節も怠らない。
紗鳴「レンくん、私も何か手伝うよ」
煉太郎「そうか、それじゃあそっちのボックスから肉のパックを取って、適当なサイズに切っておいてくれ」
紗鳴「うん、頑張るね」
どこか嬉しそうな紗鳴の後姿を眺めながら、玲児が煉太郎の脇を肘で小突いた。
玲児「なあなあ、煉太郎。お前、もう誰にするか決めてんのか?」
煉太郎「何の話だ?」
玲児「とぼけんなって。こんな美女が6人も揃ってるんだぞ。誰を狙ってるんだよ」
煉太郎「だからお前は何を言っているんだ?」
玲児「ルティマちゃんか? それともネリネちゃん? 掠璃先輩は勿論だけど、大穴狙いで紗鳴ちゃんなんてのも……」
煉太郎「そっちの玉ねぎ、そろそろ焦げるぞ」
玲児「うわヤベッ。危ない危ない」
一方その頃、ビーチパラソルにチェアを出して涼んでいる掠璃とキサラ。
キサラ「去年出たA社のルージュも良かったけど、やっぱり掠璃さんのところのが一番だったのよ☆ 何より発色と艶の出が段違いで――」
掠璃「あら、やっぱり使用者の生の声が聞けるととても参考になるわ。キサラさんはお得意様だから尚更」
キサラ「夏用にクールなカラーも欲しいわね☆ 他にも化粧水とか~」
掠璃「とても貴重な意見だわ。帰ったら開発部に話を通さなくちゃ」
その頃のルティマとネリネ。
ルティマ「ぷはぁ~! 海の中って広いね。魚もたくさん泳いでてとっても綺麗♪」
ネリネ「人間より歳取った悪魔が子供みたいにはしゃいじゃって……ってアンタ、水着のブラどこにやったのよ!?」
ルティマ「およ? いつの間に……」
ネリネ「いいからさっさと前隠しなさいよ! 煉太郎たちの目があるのよ!?」
ルティマ「どこかで落としちゃったのかな? そうだ、ネリネの貸しておいてよ」
ネリネ「馬鹿言うんじゃないわよ頭の中身空っぽ悪魔! こら、引っ張るな!」
ルティマ「いいじゃん減るもんじゃないし。あ、そっか、ネリネのじゃサイズ合わないか」
ネリネ「喧嘩売ってんのアンタ!? サイズで言ったらほとんど変わらないでしょうが!」
ルティマ「じゃあ借りても問題ないじゃん♪ はいゲット~♪」
ネリネ「ぎゃあああ!? 今すぐ返せ性悪悪魔!!」
BBQ組に戻り、
紗鳴「レンくん、お肉のサイズこれくらいでいいかな?」
煉太郎「ああ、ちょうどいいサイズだ。次はそっちのクーラーボックスから飲み物を用意してくれ」
紗鳴「うん、わかった」
玲児「……甲斐甲斐しくて可愛いじゃねえか。紗鳴ちゃんのことどう思ってんだよ」
煉太郎「またその話か」
玲児「だってお前、高校時代に紗鳴ちゃんとも……」
煉太郎「うん?」
シェイナ「……(ジーッ)」
BBQをしている煉太郎たちから数メートル前方、まるで犬のように両手を突いてしゃがんだシェイナが恨みがましそうなジト目で煉太郎を睨んでいる。
近すぎず遠すぎず……警戒心がその距離に現れているかのようだ。
玲児「シェイナちゃん……だっけ。スゲー睨んでるけどお前何かしたの?」
煉太郎「いつものことだ。たぶんこの匂いに釣られて来ただけだろ」
玲児「俺には飛び掛かる寸前の野良犬みたいな表情に見えるんですけど」
煉太郎「……食うか?」
トングで網から持ち上げたトウモロコシをシェイナに見せて問いかける。
シェイナ「お前からの施しは要らなイ……」
煉太郎「その割には涎が垂れてるぞ」
シェイナ「……これは汗ダ」
煉太郎「口から垂れてるが――」
シェイナ「汗ダ」
煉太郎「……(シュッ)」
トングに挟んだトウモロコシを、シェイナの斜め前方に手首のスナップで器用に投げ放つ。
シェイナ「――!!(バクッ)」
玲児「スゴッ、口でキャッチした!」
口に咥えたトウモロコシを芯ごとボリボリ咀嚼し飲み込むシェイナ。
煉太郎「……(シュシュシュッ)」
シェイナ「(バクッバクッバクッ)」
野菜、肉、魚、イカ焼きと次々に煉太郎が投げ放つと、機敏な動きでそれら全てを口と手でキャッチすると、シェイナはモグモグと無言で口に押し込む。
煉太郎「やっぱり腹が減ってるんじゃないか」
シェイナ「お前が食べ物を投げるからダ。食べ物を粗末にするナ」
玲児「スゲーなシェイナちゃん。まるで犬みたい――ぃいイカ焼きぃい!? 熱ちゃちゃちゃちゃ!?」
シェイナが投げ放った熱々のイカ焼きを顔面でモロに受けた玲児が顔を覆って悶絶。砂浜の上でのたうち回る。
紗鳴「だ、大丈夫玲児くん!? これ、よく冷えた水」
玲児「あ、ありがと紗鳴ちゃん」
シェイナ「私のことを「犬」と呼ぶナ。次は喉笛を食い千切るゾ」
煉太郎「ちょうど焼きそばが出来たところだが食べていくか?」
シェイナ「……食べル」
赤面しながら差し出された焼きそばの皿を受け取るシェイナであった。
ルティマ「お~いレンタロー! 正体不明の怪しい貝がいっぱい獲れたよー♪」
煉太郎「触るのが不安になる言い方をするな。ちなみにそれはサザエだ」
ネリネ「ルティマ―っ! 水着返しなさーい!」
玲児「うおおっ!? ネリネちゃんのサービスショット!? ッパァー!?」
急に頭を掴まれ首を九十度真横に捻られる玲児と、彼の背後からにこやかな笑顔で頭を掴んでいるキサラ。
キサラ「玲児クン? 不可抗力でもレディの柔肌は見ちゃいけないのよ?」
掠璃「あらあら、知らないところで大騒ぎしてると思ったら」
煉太郎「一体何をやってたんだお前たちは?」
ネリネ「アババババ!? れ、煉太郎、お願いだから見ないで! いいえ見なさい、見たら責任取って私と添い遂げなさい!?」
煉太郎「意味が分からんからとにかく一旦落ち着け。こんなこともあろうかと替えの水着を用意してある。紗鳴、そこのバッグに入ってるからネリネに渡してやってくれ」
紗鳴「う、うん。レンくん、そこまで計算して準備してるなんて凄いね……」
玲児「いや、男が女物の水着準備してくるって、どう考えてもおかしいっしょ」
ルティマ「ほら見てよレンタロー、こんなにいっぱいあったよ♪ これ全部食べれる?」
煉太郎「よく見つけたな、高級食材だぞ」※密漁になるので実際に獲ってはいけません
掠璃「あら~、今日は豪勢な食事になりそうね。お腹も空いてきたことだしお昼にしましょうか」
シェイナ「私は遠慮すル……」
口元に食べかすを付けたシェイナを見送る一同。
キサラ「わあ☆ すごく美味しそう。見ただけでお腹が鳴っちゃうわ。煉太郎クンってこういうのも得意なんだ。マルチな才能ね」
煉太郎「子供の頃、祖父から仕込まれたんで」
キサラ「ふぅん? 強かなところといい、器用なところといい、掠璃さんが気に掛ける気持ちが分かるわ☆」
掠璃「あらあら、キサラさんもレンのことが欲しくなっちゃった?」
キサラ「掠璃さんが競争相手だと厳しいかしら☆ それにウチの会社にも手のかかる人が多くてね」
ルティマ「レンタロー、この貝どうやって食べればいいの? 握り潰す?」
煉太郎「脳筋で解決しようとするな。俺がやるからお前はそっちでこれでも食いながら待ってろ」
焼きあがった野菜と焼きそばを盛りつけた皿をルティマに押し付ける。
ルティマ「はーい♪」
ネリネ「あの、私も調理手伝うわよ」
煉太郎「ネリネがやると爆発させそうで不安なんだが」
ネリネ「毎度私が爆発オチばかりしてるような言い方しないでくれる!?」
ネリネにも焼けたトウモロコシとイカ焼きを押し付けて黙らせる煉太郎。
紗鳴「私、残りの野菜見ておくね」
煉太郎「そっちも俺が見るから紗鳴は休んでていいぞ。腹も減っただろ」
テキパキと一人で焼き物を管理していく煉太郎に、何人も付け入る隙は無い。
彼の独壇場と化した調理場と、出来上がった数々の料理を頬張っていく一同。
そんな中、玲児だけは煉太郎の隣に並ぶ。
玲児「なあ煉太郎、お前とっくに気付いてるんだろ? 誰に決めるんだって」
煉太郎「何の話だ玲児」
玲児「いい加減認めろってこのモテ男。皆してお前のことが気になってんだよ。だけど選べるのは一人だけなんだぜ?」
煉太郎「……」
玲児「お前普段から仕事仕事ってバリバリ働いてばかりだけどよ、少しは自分のことを見てくれてる相手のことも気にかけてやれよ。お前が本気になれば、向こうも本気になるんだからよ」
煉太郎「玲児……」
玲児「おうよ」
ジュッ…(顔面に熱々のスパム)
玲児「あっぴぇえええええっ!?」
煉太郎「どうやら俺はまだ本気になれないらしい…」
ルティマ「レンタロー! 何してるの、こっち来て一緒に食べようよ♪」
ネリネ「待ちなさい悪魔。私が右、アンタは左よ」
ルティマ「え~? ヤダ。じゃあ私は煉太郎の膝に座る♪」
煉太郎「それじゃ俺が食べづらいだろ」
ネリネ「なん、そんな羨ま……抜け駆けするな!」
紗鳴「はわわわわ!?」
掠璃「あらあら、皆仲がいいわね」
キサラ「玲児クン、なんで顔にスパム貼り付けてニヤニヤしてるの?」
玲児「いーや? 何でもないっしょ」
それは賑やかな海水浴の一幕。ひと夏の騒々しい思い出。
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